でじたけ流 教育論-心造
 

でじたけ流“教育論”第1182回
心造


独り暮らしをしている娘が
自分の誕生日に合わせて帰ってきた
…今年で26になる…早いな

26になるのを記念して…
自分が影響を受けた26本の映画を観る
…という課題を実践しているらしく
家に戻った時には
カミさん手作りの誕生ケーキをつつきつつ
チャップリンの「街の灯」を
家族みんなで観た

「街の灯」はサイレント作品だが
…実は完全なサイレントではない

音楽や効果音は
最初からちゃんと入っていて
キッチリ同期している

したがって
例えば町の名士が演説している声を
何を言ってるだかわからない
ラッパで表現したり…と
音で笑わせる場面もある
つまり…セリフだけが入っていない

この作品が作られた時代
映画界はトーキーに移行しつつあった

しかしチャップリンは
言葉を多用すれば
英語がわからない国の人たちを
楽しませんことができない
…とそれを拒んで
お得意のパントマイムで
トーキーに挑戦した

その動きをもっとも駆使したのが
「街の灯」の前作「サーカス」

「サーカス」は…
第1回アカデミー賞で上映され
その時…晩年のチャップリンは
最初のアカデミー特別賞を受けた

「サーカス」の次回作では
トーキーが期待されたが…
前述の理由で音楽だけが加わった

チャップリンはセリフが下手なんじゃないか
…という評判が立ったことから
それじゃあ…ということで
その次に作られた「モダンタイムス」では
初めて歌を披露したが…
その歌も皮肉をこめて
何語だかわからないデタラメ語で歌った

…とまぁこれは
全部…淀川さんの受け売りである

淀川さんは自身のベストワン映画を
チャップリンの「黄金狂時代」だと
どこかで言っていたが…

私のベストワン映画は
まさにチャップリンの「街の灯」

このラストシーンに勝る
名シーンは…ないと思っている

昔は時々チャップリンの映画も
テレビで放映されていた

淀川さんの「日曜洋画劇場」や
水野晴郎の「水曜ロードショー」
そして
荻昌弘の「月曜ロードショー」

昔は必ず番組の最初と最後に
映画解説があって
それも楽しみのひとつだった

荻昌弘の解説で
「街の灯」が放映された時のことは
今でもハッキリと覚えている

「街の灯」は87分の作品
通常の映画番組枠では時間が余ってしまう

エンディングに登場した荻昌弘は
目が真っ赤だった
生放送ではなかったと思うが
あきらかに一緒に鑑賞していた

そして余った時間…
贅沢なようですが
もう一度ラストシーンを観てみましょう
…と
再度あのラストシーンを流した
とても印象的な番組だった

生きることへの
…強さ
…そして切なさ

強さを強調するだけでなく
切なさに押しつぶされるでもなく
切ないからこそ…力強く生きる

そういう普遍的な人生哲学が
…この映画には詰まっている

そして
それは…
魅力あるキャラクターの条件でもある

翌朝
娘は…
今度はお父さんの誕生日あたりに帰ってくる
…と行って家を出た

やっぱり…人生、日々更新

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