Episode No.993(20011031):団らんは力なり

「GHQ」の御手洗・・・なんて書くと
トレード・マークのコーンパイプをくわえたマッカーサー
便器に腰を下ろしいてるシーンを思わず想像してしまうけれど・・・

今日の話に出てくる「GHQ」は、お堀端にあった占領軍の本部じゃなくて
「Go Home Quickly」運動のこと。
つまり・・・
接待や社内での飲食、残業を減らして
早く自宅に戻って一家団らんを大切にしようという運動。

提唱者の名前は、御手洗(みたらい)毅・・・あのキャノンの創業者だ。

景気低迷が続く今では・・・
残業代を稼ごうにも、思うように仕事がないのが現状だが
少し前なら「GHQ」を意識しないと、
家庭のために仕事があるのか、仕事のために家庭があるのか
わからなくなってしまう人も大勢いただろう。

が、驚くべきことに・・・
御手洗がキャノンの社長を務め、この運動を自ら率先していたのは
昭和34=1959年当時・・・高度成長真っ直中のことだった。

今でこそキャノンは、カメラメーカーとして知られているが
ある業界では昔から一般のカメラ以外で有名なモノがある。

それはレントゲンをはじめとする医療機器
御手洗自身も、もともとは医師で産婦人科病院を営んでいた。

医師の視点から経営を行った御手洗が第一に考えたのは、社員の健康
日本企業で初の週休二日制を導入したのも御手洗キャノンだった。

そのかわり・・・時間には厳格なのが御手洗の信条。

始業時間になって、また煙草などふかしていようものなら怒鳴りつけられる。
約束の時間に遅れて来る者があれば、相手かまわず叱りとばしたという。

確かに・・・
集中すれば1時間で出来ることも
「残業すればいいや」なんて思った瞬間に3時間かかってしまうことは、よくある。

後回しにして積もっていく仕事は
なかなかヤル気になれないから・・・スタートするまでに時間がかかる。

長く仕事をしているのと、真剣に仕事をしているのとでは
仕事の質は全然違う。

長い時間かけて、ダラダラやっている人と
どんどん仕事を処理していける人とでは・・・時給も違う。

忙しぶるのは簡単だ・・・ほおっておいても日は暮れる。

どれだけやったかも大切でけど・・・
見てもらえるのは、何をやったか・・・だけ、なんだよな。

ちなみにキャノンという社名・・・
観音から来てるというのも有名な話。

「時間の使い方が、もっとも下手な者が、
 まずその短さについて苦情を言う」・・・ラ・ブリュイエール(仏作家)


参考資料:「20世紀日本の経済人ll」日本経済新聞社=編 日経ビジネス文庫=刊 ほか