Episode No.3403(20090723)
メールとレター

個室(トイレ)でちょびちょびと読んでいた
「異説・黒澤明(文藝春秋=編)」をようやく読み終えたので、
書庫からまだ読んでない本をあさってきた。

三島由紀夫・著「レター教室」 が目に入った。

そういえば…
日に何通ものメールを書いているが、
MailとLetterって、どう違うんだ?

Letter=手紙。
Mail=郵便、のことだが…
今や電子メールの略としての意味合いが強い。

…で、そもそも郵便とは
書状・はがきや荷物などを宛先の人に送り届ける通信事業。
…だから
電子メールは、電子的通信事業、ってことになるな。

実際の用途や様式から考えると
メールは「はがき」に近いものじゃないかと思う。

封のない「はがき」は誰でも覗き見ることができる。
同じように、さまざまなサーバを経由するメールも、
実は覗き見ようとすればできないことはないし、ね。

最近の学校では
パソコンやインターネット、メールの使い方
…といった技術的なことは教えるらしいが、
「はがき」と「手紙」を使い分ける方法や、
「手紙」の書き方、「手紙」を書くタイミング
…といったコミュニケーションの基本について
教えているのだろうか…?

三島由紀夫の「レター教室」は、
手紙の書き方を教えるノウハウ本ではなく、
ひと癖もふた癖もある登場人物たちが
やりとりする手紙を中心に展開する物語だ。

序文にはこう書かれている。

「万事電話の世の中で、
 アメリカではすでにテレビ電話でさえ、
 一部都市で実用化していますが、
 手紙の効用はやはりあるもので、
 このキチンと封をされた紙の密室の中では、
 人々は、ゆっくりあぐらをかいて語ることもできれば、
 寝そべって語ることもでき、
 相手かまわず、
 五時間の独白をきかせることもできるのです」

書かれたのは40年以上前の1968年。
奇しくも日本では郵便番号制度が実施された年だ。
この時、三島由紀夫は43歳…自決の2年前。

まだ出だし程度しか読んでいないが、
実に入り込みやすく、
文学というより、
ワイドショーの再現ドラマでも見ている感じ。

それもそのはずで当時この「レター教室」は
女性週刊誌に連載されていたらしい。

おそらくは
ワイドショーの再現ドラマが登場する以前の話で、
今更ながら三島由紀夫という時代の寵児の
企画力の凄さを感じた。


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