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Episode No.056

宮殿に仕える3,000人の女性の中から、玄宗皇帝に見初められて王妃となった楊貴妃の生まれは、とても貧しかったという。

継母に育てられた楊貴妃は、辛い少女時代を過ごしたが、やがて、その美貌で天下をも左右する地位につくことができた。

これはあくまでも仮説だが、この楊貴妃の物語をベースにしたと思われる物語がある。
『葉限』という女性が美貌をもって玉の輿にのるこの話は『酉陽雑俎(ゆうようざつそ)』という本に収められて、9世紀に中国で出版されている。

さらに800年後。『葉限』の話はヨーロッパ各地に伝わり、地方により脚色されていたが、その話をルイ14世のお抱え作家が、まとめ直すことになった。

こうして17世紀の童話作家、シャルル・ペローによって書き直された話は、やがて世界に広がっていくことになる。

タイトルは『シンデレラ』。

『葉限』の話中には、継母によるいじめや靴によるテストのエピソードもあったというから、『シンデレラ』の元が、この『葉限』であったことは間違いないだろう。

ちなみに"ガラスの靴"は、ペローの書いた原作では、単なる"皮の靴"だったが、印刷屋の誤植よって出版された時には"ガラスの靴"になっていたという話も残っている。

この文章の冒頭を読んで「楊貴妃ってシンデレラみたい」と思った人も少なくないと思うが、実はその逆である・・・のかもしれない。


参考文献:「聞いてびっくり! モデルは誰だ」素朴な疑問探求会=編 青春出版社=刊 ほか

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