Episode No.899(20010713):蘇る風景

講談社から『再現 日本史』というグラフ誌が出ている。

同じ講談社から出ている『日録20世紀』のような厚さ5mm程度しかない薄手の雑誌だ。
グラフ誌の特長は、文字通り写真を中心としている点。

自分の昔の写真を見るのは、あまり好きではないが
鉄道が通った頃の写真だとか、都電が走っている銀座の街並みだとか・・・
そういう昔の写真を見るのが私は好きだ。

失われた風景に・・・何となくロマンを感じたりして。

ただし、過去にはやはり限りがある。
『日録20世紀』シリーズがウケて、講談社以外でも似たようなシリーズが出たせいか・・・
あるいは講談社の『日録20世紀』シリーズの方が後だったのかは、よくわからないが
さすがに似たような昔の写真が、あちこちに使われて
失われた風景との出逢いにも新鮮味がなくなってきた。

そういうこともあってか、今度の『再現 日本史』シリーズには新しい趣向があった。
タイトルにもあるようにCGで再現された「その時」の様子がいくつか出ている。
あるはずのないペリーのカラー写真が載っていたりね。

「その時」と言えば、NHKの『その時 歴史は動いた』という番組をわりと見るんだけど・・・
あの番組でも、CGを駆使した再現映像がよく出てくる。

CGの技術向上とコストダウンが、失われた風景を今、私たちに見せてくれている。

そのうち・・・
自分が見たモノが、はたして本物だったのか作り物だったのか
少なくとも素人目には判断がつかなくなっちゃうんじゃないかな。

今の子供たちにとって、家庭でビデオを撮ったり見たりするのは当たり前。
自分が小さい頃のビデオを繰り返し見ているうちに・・・
本当に自分が覚えている体験なのか、
それとも後になってビデオで見た出来事だっのか・・・
きっと区別がつかなくなるだろう、と思うことがよくある。

それは、嬉しいことなのか・・・
それとも悲しむべきことなのか・・・
良かれ悪しかれ、現実はそうなっているんだから止めようもないね。

いずれにしても・・・
リアリティのあるものを見せられて、すぐに「やった気」になっちゃう人は増えるだろう。

それで満足してはいけない・・・なんて言ったところで
限られた生活の中で、何から何まで経験できるはずはないんだし
それは、それでいい面もあると思う。

そうでなきゃ・・・どんなドラマも楽しめない。

「嘘とは何か? それは仮面をかぶった真実」・・・バイロン


参考資料:「再現 日本史」講談社=刊
     「格言の花束」堀 秀彦=編 現代教養文庫=刊