バイク好きだった盟友Sが、
私が40を過ぎてバイクの免許をとった頃、
こんなことを言っていた。
「車と違ってバイクで走ってるとさ。
季節が変わるのがニオイでわかるんだよ」
確かにそうだということは、すぐに実感できた。
また、こんなことも言っていた。
「これから、こういうこともあると思うけど…
カーブでズルッと滑りそうになって、
怖いっ、と思う。
そういう時に足下を見ると必ず転ける。
怖いけど遠くを見て、
しっかりとアクセルをふかす。
すると自然にバイクが立ち上がってくる」
幸いにも私には、
まだバイクでそういう経験をしたことはない。
…しかし、
人生においては似たような経験をした。
とくに今思えば、
去年の一年間は足下ばかり見て怖がっていた。
だから、
とうとう盟友の墓参りにも行かず終いだった。
今年は少し気分を持ち直して、
二度、墓参りをしている。
今もまだ、
足下をズルズルと滑らせながら、
やっとの思いで走っているところではあるけれど、
少しは前を見て、
アクセルをふかせるようになってきた。
こういうことを言いたかったんだよな…奴は!
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