美術館に行く楽しみは、
もちろん素晴らしい作品に出逢うためなのだが…
そこに来ている、こだわり派を感じさせる
個性豊かな客たちの姿を見るのも楽しみのひとつ。
ひたすら関心している人もいれば、
評論家のように眉をひそめている人もいる。
見るからに画学生のような若者もいれば、
どう見ても会社員には見えない怪しい感じの人もいる。
…ま、かくゆう私自身も、
かなり怪しく思われているに違いないが。
見に来ている人を見る。
見に来たつもりが見られてる。
映画やお芝居、あるいはライヴと違って、
美術館の客同士は、
前になったり後ろになったり、
縦横無尽に動き回っているので、
客同士の意識が結構強く感じられる。
この客たちを描いたらきっと面白いものができそうだ。
あの静かな、
映画の撮影本番直前のような
緊張感のある空間にあって、
作品と自分、
自分と他の客が放つ息づかいには、
結構エネルギーを奪われてしまうのだが、
その奪われたエネルギーの隙間に
スーッと今までの自分にない感覚が目覚めるのを
感じる一瞬もすこぶる気分がいいのである。