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							Episode No.065:サヨナラ、サヨナラ 
						日本初の映画評論家、淀川長治さんが亡くなった。89歳だった。 
						つい、この間の"日曜洋画劇場"では元気な姿を見せていたのに。 
						しかし、死ぬ直前まで現役でいられるというのは、もの凄いことである。 
						おそらく、テレビでレギュラー番組を持つ人としては、最高齢だったろう。 
						テレビで映画を観るのは、途中にCMが入るので本当は好きじゃないんだけど、淀川さんの解説だけは見たくて、いつもそこだけ付けていた。 
						これは決して作り話ではないのだが。 
						この間の日曜洋画劇場の解説で、淀川さんがいつもの 
						「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」 
						を言うところで、ちょっと気になったことがある。 
						いつもはテンポの良い、軽快なこの挨拶が 
						「サヨナラ、サヨナラ、・・・さようなら」と、いう感じで・・・。 
						最後だけが"サヨナラ"ではなく、"さようなら"と確実に"う"を入れて、妙に丁寧に言っていたように聞こえたのである。 
						先日、黒澤明監督が亡くなった時に、助監督時代からの知り合いだった淀川さんは、 
						「ビックリしなかったね。10日くらい前から何故か会いたくて会いたくて仕方なかったんだけど、具合が悪いというので遠慮してた。ムシの知らせだったのね」と言った。 
						そして、黒澤監督の葬儀に車椅子で現れた淀川さんは 
						「すぐにボクも行くからね・・・と拝みました」とコメントした。 
						そして11月11日午後8時7分、それは現実となってしまった。 
						ところで淀川さんが「サヨナラ、サヨナラ」という挨拶をはじめたのは、テレビで映画解説をするようになった1966年頃からだという。 
						何故、何度もサヨナラを言うのですか? という質問に淀川さんは、こう言った。 
						「テレビの前にいる、おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん、そして子供たち。ひとり一人に挨拶をしているつもりなのね。そうしたら自然にこうなっちゃったわけ」 
						あの名調子が生で聞けなくなったのは何とも寂しい限りだが・・・。長い間、本当にお疲れさまでした。 
						心よりご冥福をお祈りいたします。 
						
						 
						 
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